2025 年 31 巻 2 号 p. 154-159
本症例は56歳女性,断酒困難なアルコール性肝硬変に伴う難治性食道静脈瘤破裂の1例である.内視鏡的静脈瘤硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy: EIS)および内視鏡的静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation: EVL)を繰り返し施行したが,門脈圧亢進と瘢痕形成を背景に再出血を繰り返した.SBチューブによる圧迫止血後,EIS/EVL併用療法を施行し,最終的に撲滅結紮法を追加することで止血を得たが,根本的な管理には門脈圧のコントロールとともに断酒が不可欠であった.本症例を通じて,内視鏡的治療の最適化と同時に,断酒支援を含めた包括的な管理が重要であることを学んだ.本報告では,難治性食道静脈瘤破裂に対する治療戦略を示し,断酒支援の重要性について考察する.