抄録
症例は30歳,男性,日系ブラジル人.左季肋部鈍痛の精査で高度の血小板減少と脾腫を指摘された.腹部血管造影所見から特発性門脈圧亢進症と考えられ,最大径40 mmの多発脾動脈瘤を合併していた.肝容積を上回る著明な脾腫と瘤径の大きな多発脾動脈瘤に対して,2回のコイルによる脾動脈瘤塞栓術にて脾動脈本幹の血流を遮断し,待期的に脾摘術と脾動脈瘤切除術を施行した.術中超音波で肝外門脈に壁在血栓を認めた.脾重量は900 gで,肝生検の病理所見では特発性門脈圧亢進症による変化と診断された.術後は門脈血栓増悪を予防するためAT-III製剤,抗Xa活性阻害剤投与による抗凝固療法を行い,ワーファリン内服を開始した.経過良好で術後第11病日に退院した.外来経過観察中のCT検査で門脈血栓の増大が認められたが,ワーファリン内服の継続により消失した.門脈・脾静脈血栓発生の危険の大きい巨脾に多発脾動脈瘤を伴う特発性門脈圧亢進症の治療に対して,一連の治療戦略は安全に機能した.