抄録
肝硬変では,生体内で重要な働きをしている微量元素である亜鉛の欠乏が見られる例が多い.これは,高アンモニア血症を含む窒素代謝異常の一因とされ,また線維化進展や免疫能低下などとの関連も示唆されている.亜鉛欠乏の原因としては,消化管からの吸収低下や尿中排泄の増加が指摘されている.また最近,肝硬変の合併症である浮腫や腹水に対する治療として使用される利尿剤が,尿細管からの再吸収を抑制することで,尿中排泄を増加させていることが指摘されている.今後,さらに肝硬変の病態における亜鉛欠乏の意義や補充療法の効果に関する検討の進むことが期待される.