日本門脈圧亢進症学会雑誌
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超音波ドプラ法で有腹水門脈圧亢進症例にみられた脾内の瀰漫性動静脈短絡(diffuse A-V shunt)
杤尾 人司登尾 薫
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2023 年 29 巻 4 号 p. 248-250

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抄録

門脈圧亢進症は脾腫を合併していることが多く,血流動態的に関連しているが,脾内部の血流動態について詳細に検討されたことはない.今回,腹水を有する門脈圧亢進症の3症例(①自己免疫性肝炎と臨床診断されている70代女性,②肝は萎縮し左葉門脈3次分枝に“portal sandwich sign”が認められた原因不明肝障害の70代男性,③B型肝硬変の50代男性)において,高度に腫大した脾内部の血流を超音波ドプラ法で観察したところ,脾被膜下10 mm前後に表示された複数の末梢静脈が拍動しており,パルスドプラ法による波形解析で最高流速10 cm/s超の動脈拍動に一致する拍動性血流波形が記録された.これは複数の末梢静脈内に動脈血流が流入していることを示すドプラ所見であり,これら3例の脾には仮称“diffuse A-V shunt”とも言える血流異常が存在していると考えられた.今後,本所見がどのような病態を背景にして認められるのかを含め,門脈圧亢進症との関連性を検討していくべきと考えられた.

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© 2023 日本門脈圧亢進症学会
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