2024 年 30 巻 2 号 p. 151-158
超音波ドプラ法で脾門部と脾辺縁部の末梢静脈を観察し,通常の血流動態を把握するとともに,末梢静脈の血流波形が動脈性拍動を呈する“diffuse A-V shunt”が疑われる症例を検索した.また,これら静脈血流と脾腫の程度や腹水の有無との関連を検討した.対象は脾血流を観察した324例(男164例,女160例.年齢の中央値66歳(18~93歳)).その結果,脾腫陰性の脾辺縁部末梢静脈の血流は流速8 cm/s前後の定常流であり動脈性の拍動流は認められなかった.脾辺縁部の“diffuse A-V shunt”血流はIPHを含む種々の慢性肝疾患に認められた.この現象は脾腫の程度が強いほど出現する頻度が高く,陽性症例のほぼ全例に腹水が認められた.脾末梢静脈の血流速度は脾腫の程度に相関して高速化した.以上より,diffuse A-V shuntは脾血流の亢進を背景に出現し,門脈圧亢進の増悪に強く関連していると考えられた.