2024 年 30 巻 4 号 p. 252-260
食道胃静脈瘤手術はシャント手術と直達手術に大別される.シャント手術は手技の煩雑さと合併症からほとんど行われなくなったが,直達手術であるHassab手術は内視鏡やIVRの難治例を中心に行われている.Hassab手術では脾臓摘出に加え胃上部と食道下部の血行郭清を行い,その特徴としては胃静脈瘤には効果的であるが,胃壁内の供血路を介した食道静脈瘤の残存が問題であった.先人はこの問題を克服すべく食道離断術や胃上部切除術を考案したが,現在では腹腔鏡下Hassab手術と内視鏡治療を併用することで低侵襲に食道静脈瘤の治療も可能となった.Hassab手術による左胃,後胃,短胃静脈郭清後の食道静脈瘤に対する内視鏡治療は極めて有効である.本稿では,門脈圧亢進症の門脈血行動態と外科治療における歴史の変遷を解説し,腹腔鏡下Hassab手術における当施設の手術方法や内視鏡とのcombination therapyの実際を供覧する.