2024 年 30 巻 4 号 p. 261-265
本総説では,門脈圧亢進症に対する経頸静脈的肝内門脈体静脈短絡術(TIPS)の役割とその進展について述べる.TIPSは,門脈圧を低下させることにより,静脈瘤出血や難治性腹水,肝腎症候群などの門脈圧亢進症に関連する合併症を予防・改善する治療法である.1969年に概念が提唱され,技術が発展する中で,近年ではカバードステントの導入によりシャントの開存率が大幅に向上し,肝硬変患者の生存率や生活の質の向上に貢献している.TIPSは特に,内科的・内視鏡的治療が効果を示さない患者に対して有効であるが,重度の肝不全や活動性の感染症などの禁忌が存在する.また,TIPSの適応基準としてMELDスコアや患者の全身状態が重要であり,日本と海外の治療方針の違いも議論の対象となっている.本稿では,TIPSの歴史,現状,適応,合併症管理,および今後の課題について詳述する.