日本門脈圧亢進症食道静脈瘤学会雑誌
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治療成績および術後QOLからみた食道胃静脈瘤に対する手術療法の検討
-手術併用経カテーテル的硬化療法と経腹的食道離断術-
板東 登志雄北野 正剛吉田 隆典二宮 浩一松本 敏文Baatar Dolgor坪井 貞樹
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1998 年 4 巻 1 号 p. 26-29

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抄録
教室では1993年以来, 食道胃静脈瘤に対する新しい治療法として手術併用経カテーテル的硬化療法 (OIS) を施行している.今回, 本法の有用性を検討するために治療成績ならびに術後QOLの点から経腹的食道離断術 (TAET) との比較検討を行った.対象は術後2年以上を経過したOIS施行症例15例, TAET施行症例19例である.術後3カ月目の完全消失率は, OIS群では93.3%, TAET群では72.1%で両者の間に有意差は認められなかったが, 術後1年ならびに2年の累積再発率はOIS群ではそれぞれ6.7%, 6.7%, TAET群では15.8%, 36.8%で, 術後2年の累積再発率はOIS群で有意に低率であった.術後合併症としては, TAET群において離断部の狭窄を6例, 縫合不全を2例に認めたのに対して, OIS群ではこれらの合併症は認めなかった.術後在院日数はOIS群では33.5±5.2日で, TAET群の48.4±14.3日に比べ有意に短かった.以上より手術併用経カテーテル的硬化療法は経腹的食道離断術と比較して良好な治療成績が得られるとともに, 食道離断, 迷走神経切離などに伴う術後合併症を回避することが可能であった.また安全, 確実な経カテーテル的硬化療法を術後の早い時期から短い間隔で施行できることから術後在院期間の短縮も得られ, 術後QOLの点からも有用な術式と考えられた.
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© 日本門脈圧亢進症学会
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