日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
Print ISSN : 1344-8447
ISSN-L : 1344-8447
経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術 (TIPS) 後に5年7カ月の長期経過を観察しえた難治性腹水の1例
成高 義彦島川 武我妻 美久山下 久幾今野 宗一石橋 敬一郎横溝 肇吉松 和彦塩沢 俊一勝部 隆男小川 健治上野 恵子磯部 義憲
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 10 巻 2 号 p. 63-67

詳細
抄録

TIPS後5年7カ月の長期経過を観察しえた難治性腹水の1例を経験したので報告する.症例は72歳の男性, 昭和63年頃より肝硬変症で通院.平成7年頃より難治性腹水が出現した.平成8年9月, 門脈圧減圧の目的でTIPSを施行した.方法は右肝静脈と右門脈枝の間に径8mmのwallstentを留置した.術後の肝性脳症は制御可能で, 難治性腹水や静脈瘤は消失した.シャント機能不全は4年後と5年後に発生し, 腹水の悪化を認めたが, それぞれPTAで回復した.5年7カ月後に肺炎の併発で死亡した.剖検所見は甲型肝硬変で, シャントに血栓形成や肉芽の異常増生はみられず, シャントの開存が確認された.以上より, TIPSの腹水に対する効果はシャントが開存する限り長期にわたってみられ, TIPSの有用性が確認された.なお, シャントの機能不全はPTAにより回復可能で, その早期発見が重要である

著者関連情報
© 日本門脈圧亢進症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top