抄録
最近, アンジオテンシンII (ANGII) 受容体拮抗薬の肝線維化抑制や門脈圧低下作用が検討されている.しかし, その有効性についてはさらなる検証が必要である.ヒト門脈循環における一酸化窒素 (NO) の役割は必ずしも明らかではない.われわれはアルギニン欠乏症にNO産生低下を見出し, 門脈循環障害に加えて, 血液凝固能亢進や脾腫の発症を認めた.門脈圧亢進症におけるNOの意義については今後のブレイクスルーが期待される.生理活性物質による門脈循環調節が次第に明らかになってきているが, それらの生理活性物質あるいは受容体を分子標的とした門脈循環の制御が今後の課題となる.