日本門脈圧亢進症学会雑誌
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HBVキャリアの劇症化により治療中食道静脈瘤破裂をきたした1例
山田 雅哉井上 和明安田 宏与芝 真
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2003 年 9 巻 4 号 p. 213-217

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抄録

症例は27歳男性.当院で無症候性HBVキャリアと診断され外来通院していたが, 1年半来院を自己中断し, その間に肝硬変にまで進展した.平成13年1月HBVキャリアの肝硬変からの急性増悪と診断し入院治療を開始したが, 第3病日に劇症化し, 血漿交換 (PE) と血液濾過透析 (HDF) を開始した.しかし, 第14病日12回目のPEとHDFを施行中に食道静脈瘤破裂をきたし, EVLを施行した.止血後に脳症IV度, 呼吸状態の悪化がみられ人工呼吸管理を必要とした.その後食道静脈瘤より再出血はみられず, 治療を継続することにより肝炎を沈静化し退院となった.HBVキャリアからの劇症化, および肝硬変から急性増悪した場合の予後は一般に不良であり, 静脈瘤の破裂を合併すれば致死的なことが多いが, 強力な人工肝補助療法下に内科的集中治療により肝炎を早期に沈静化させ, 食道静脈瘤の破裂をきたしても止血コントロールができれば救命することが可能であると考えられた.

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