抄録
症例は4か月女児.顔面蒼白,嘔吐にて当院救急搬送.来院時血圧,酸素飽和度は測定不能.Hb 4.7 g/dL,pH 7.066,BE –17.9 mmol/Lであり出血性ショックが疑われた.CTにて,肝右葉前区域に80 mm大の巨大腫瘤と腹腔内に液体貯留を認め,AFP 960,215 ng/mLより肝芽腫の腹腔内破裂と診断した.赤血球輸血にて一時的に安定したが,来院5時間後に腹部膨満の急速な悪化,血圧低下を認め,出血性ショックとなった.腹部膨満により下肢の血流途絶,循環不全を認め,肝動脈塞栓術のため大腿動脈,内頸動脈の確保を試みるが困難であった.その後腋窩動脈が触知可能であることに気づき,左腋窩動脈より肝動脈塞栓術を施行した.腫瘍崩壊症候群や急性腎不全を合併したが,徐々に安定し,右肝3区域切除術および術前術後の化学療法を施行し退院.現在発症後約4年経過,無病生存中.腹部膨満のため血管確保が困難であった肝芽腫例に対し,腋窩動脈は血管確保の選択肢となりうると思われた.