日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム2: 小児血液・がんと臓器移植・再生医療
生体外で製造する血液細胞は本当に必要なのか?
恩田 佳幸江藤 浩之
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2015 年 52 巻 3 号 p. 220-223

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抄録
少子高齢化の影響で近い将来献血由来血液製剤が供給不足となることがほぼ確実と予想されており,代替の供給源としてiPS細胞由来血液細胞が有望視されている.まれな血液型に対応可能,多数回の血小板輸血で問題となるHLA/HPA抗体産生血小板輸血不応患者へHLA一致血小板製剤が供給可能,輸血関連感染症のリスクが非常に低い等のメリットもあり期待されている.様々な血球分化誘導法が改良されてきたが,臨床応用に十分な血小板・赤血球製剤を得るにはいまだ多くの時間・費用・労力を必要とする.我々はiPS細胞由来造血前駆細胞にc-MYC,BMI1,BCL-XLの3遺伝子を導入することでドキシサイクリン制御下に無限自己増殖,分化誘導可能な不死化巨核球株の作製に成功した.これによって従来の血小板分化誘導法と比べて短期間に多量の成熟巨核球,血小板が得られるようになった.iPS細胞バンク,不死化巨核球株バンクの構築が検討されており,臨床応用にむけた努力が続けられている.また同様の方法でiPS細胞由来造血細胞にc-MYC,BCL-XLを導入することで不死化赤芽球株の作製にも成功し大量に必要な赤血球製剤の作製,臨床応用も模索されている.不良な脱核効率,不完全なグロビンスイッチングが克服すべき課題として挙げられる.
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© 2015 日本小児血液・がん学会
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