抄録
四肢原発骨肉腫は化学療法,画像診断,外科的治療を柱とする集学的治療体系の進歩により治療成績が改善してきた.局所治療は外科的治療が中心だが,切除に際しては腫瘍を‘適切に’腫瘍周囲の正常組織とともに広範切除することが必要である.切除辺縁を不適切に設定すると局所再発の可能性が極めて高くなる.一方,必要以上に広範に腫瘍を切除すると術後の患肢機能が悪化する.患肢機能を可能な限り温存しかつ再発のない外科的治療を行う必要がある.腫瘍の広がりにより骨,血管,皮膚を合併切除せざるを得ない場合には人工関節,処理骨や(人工)血管,皮弁,植皮などによって必要に応じ再建する.特に骨原発悪性腫瘍は腫瘍広範切除後の患肢の再建が必須である.成人例の腫瘍用人工関節置換による患肢温存術は安定した治療成績が得られているが,長期生存に伴う患部の遅発性感染,人工関節周囲の骨折,人工関節の緩み,破損などの合併症が問題となる.従来,小児例では成長に伴う脚長差や高い活動性に伴う人工関節の長期の耐久性に問題があるため患肢温存の適応は少ないとされ,中でも8歳以下の症例には脚長差の補正のため長期に渡り複数回の手術が必要となることから患肢温存術の適応ではないという報告もある.患肢温存と切断術の術後成績の優劣についてはコンセンサスが得られていないが近年は伸長型腫瘍用人工関節の開発,脚延長術の導入によりさまざまな患肢温存術式が試みられている.