抄録
生後12か月未満の乳児期に発症する急性リンパ性白血病(ALL)は小児ALLの約5%を占めるに過ぎないが,その約80%を占めるMLL遺伝子再構成陽性(MLL-r)例の予後は不良であり,現在でもその無イベント生存率は40%台にとどまる.乳児MLL-r ALLの治療成績の改善を目的として,本邦ではMLL96,MLL98,MLL03と3つの全国規模の臨床試験を実施した.その基本戦略は第1寛解期に同種造血幹細胞移植を実施することにより乳児MLL-r ALLの予後を改善することにあったが,一定の進歩は遂げつつも,大幅な治療成績の向上は得られていないのが現状である.近年,欧米で施行された臨床試験における造血幹細胞移植症例と化学療法症例との比較検討の結果,MLL-r ALLであっても診断時月齢が低い(6か月未満等)等の予後不良因子を有さない場合には,同等の治療成績が得られていることが示された.更に,移植関連の晩期合併症リスクを軽減する観点からも,今後は造血幹細胞移植は一部の高リスク症例に適応が限定されるべきである.一方で,乳児MLL-r ALLの治療成績向上には新規治療の導入が必要条件であるが,現在解明されつつあるMLL-r ALLの発症メカニズムに基づいて,エピゲノム修飾薬などの新規治療開発が進みつつある.最後に,乳児MLL-r ALLは疾患の稀少性からも,国際的な取り組みが必要である.