抄録
小児急性リンパ性白血病(ALL)のbiology研究の進歩は分子病態に基づいた層別化治療を可能とし,治療成績の向上に大きな貢献を果たしている.近年,ゲノム解析技術の進歩が体系的に収集された検体を生かした結果,ALLのbiology研究は飛躍的に進歩した.Ph(+)ALLと類似の発現プロファイルを持つPh-like ALLが注目されているGA,予後不良という側面よりも,チロシンキナーゼ阻害剤が有効であるサブグループであるという観点からとらえることが重要であり,どのようにtargetableな症例を特定するか,という戦略が今後必要と考えられる.また,CRLF-JAK2経路の異常も新たに同定された一群である.CRLF2の転座だけでなく,この経路を制御する分子の異常も小児ALLの病態に関与し,特に21trisomy(Down症候群)に合併したALLでは約半数でこの経路の異常がみられることも重要である.さらに最近では,生殖細胞系列の性質がALLの病態に関与することも広く認識されるようになった.例えば,低二倍体ALLの一定の割合は正常細胞にもTP53変異を持っているということや,ALL家系例における転写因子の正常細胞の変異など,生殖細胞系列の異常を背景とした発症が報告された.また,ゲノムワイド関連解析によって小児ALLの発症や病型,有害事象に関連する一塩基多型も同定され,今後のALLの治療戦略の向上には,後天的に生じた変異と生殖細胞系列の性質とを合わせて包括的に理解しなければならないと考える.