日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム6: 小児がん治療と機能温存,その意義は
小児四肢悪性骨腫瘍に対する患肢・機能温存の試みと課題
遠藤 誠川井 章
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2015 年 52 巻 5 号 p. 369-375

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抄録

小児原発性悪性骨腫瘍には骨肉腫,ユーイング肉腫,軟骨肉腫などが存在し,骨肉腫が最も多く,その大半を占める.骨肉腫は10代の長管骨骨幹端部に好発し,特に膝関節周囲の発症が多い.化学療法を含む集学的治療の導入により,生存率の大幅な上昇とともに,切断術ではなく,患肢温存術が選択される症例が増加した.現在では,stage II骨肉腫患者の9割が患肢温存術を受けている.小児四肢悪性骨腫瘍に対する患肢温存術では,成人と異なり,骨成長がみられること,患者の活動性が高いこと,より長期的な耐久性に配慮する必要があること,などに注意を要する.脚長差を補正する目的で延長型人工関節などが用いられるが,耐久性に問題があり,患者の約半数は再置換術が必要となる.人工関節の耐久性には,年齢,性別,大腿骨切除長,大腿四頭筋合併切除,化学療法・放射線治療の有無などが関与し,低年齢,男性,長い大腿骨切除長,多い大腿四頭筋切除量,化学療法・放射線治療の併用が低い耐久率に関連する.小児四肢悪性骨腫瘍に対して,腫瘍用人工関節による患肢温存を行った患者の長期成績に関しては,いまだに不明な部分が多く,今後明らかとなることが期待される.

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© 2015 日本小児血液・がん学会
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