2016 年 53 巻 1 号 p. 16-20
【緒言】肝芽腫ではシスプラチン(CDDP)をキードラッグとした術前化学療法が重要である.本邦ではCDDPとピラルビシンの併用によるCITA療法が主流であるが,今回,初回のCITA療法中に合併症を来し,CDDP単剤療法を施行した中間リスク群肝芽腫の1例を報告する.【症例】1歳女児.PRETEXT IIIの中間リスク群肝芽腫に対し,開腹生検後8日目からCITA療法を開始したが汎発性腹膜炎を合併し,骨髄抑制と創部離開が遷延した.CITA開始後38日目からCDDP単剤療法に変更したところ,骨髄抑制も軽微で予定通り術前化学療法を遂行できた.【結論】中間リスク群肝芽腫において,合併症をきたした場合には,CDDP単剤療法が治療間隔を間延びさせずに施行できる治療法の一つとして許容される可能性が示唆された.