ALK阻害剤であるcrizotinibは進行神経芽腫の予後を改善させ得る分子標的薬として期待がもたれているが,本邦におけるcrizotinibの小児神経芽腫に対する使用経験は極めて乏しい.今回,ALK増幅が認められた難治性神経芽腫に対してcrizotinibを使用した症例を経験したため報告する.症例は診断時1歳4ヶ月女児.左副腎に原発の神経芽腫であり,多発する遠隔転移を認めstage 4と診断した.MYCNは非増幅であったが,ALKの増幅が確認された.05A1/05A3療法,大量化学療法,手術を行ったが,術後17日目に頭痛,下肢痛覚の鈍麻,運動障害及び排尿障害を発症しMRIで脊髄転移が認められた.FISH法による髄液中細胞のALK増幅が確認されたため,放射線照射とともにcrizotinibの投与を行い計26日間の内服を行った.画像上部分奏功を得たが,grade 3の嘔吐のために投与が困難となり,治療を中止した.crizotinibの安全性と有効性について今後の症例の蓄積が必要と考えられる.