抄録
肺ムコール症は血液腫瘍性疾患の治療中に問題となる重篤な真菌感染症であり,早期診断と積極的な治療が必要となる.フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)に対するイマチニブ併用多剤併用化学療法での寛解導入療法中に肺ムコール症を発症した15歳男性例を経験した.肺の摘出病変からムコール症と診断,アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)投与を継続し,寛解導入療法後の化学療法はダサチニブ単剤で継続した.肺ムコール症の残存病変に対しては外科的切除を行った.Ph+ALLの中枢神経再発を起こしながらも非血縁者間同種骨髄移植を行ったが,重症の移植片対宿主病を発症し移植後day 93に死亡した.剖検は行われておらず確定はできないが,肺ムコール症の再燃を強く疑う経過はとらず,その管理には十分な期間のL-AMB投与と肺病変の外科的切除が有効と思われた.