日本小児血液・がん学会雑誌
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多診療科シンポジウム(教育セッション): 造血幹細胞移植
小児急性リンパ性白血病の移植適応を考える
~症例提示~
今村 俊彦
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2016 年 53 巻 3 号 p. 219-222

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抄録

小児急性リンパ性白血病は,その85–90%程度の症例が治癒する時代となり,世界的には同種造血細胞移植の適応についても縮小されつつある.

また,全身放射線照射やブスルファンを用いた骨髄破壊的移植は,特に成長期の小児において,内分泌学的異常を中心とした,様々な晩期併発症を誘発し,たとえ原疾患が治癒したとしても,その後の患児の生活に多くの問題を残す.

こうした点からも,小児の急性リンパ性白血病の同種造血細胞移植においては,本治療によって最大の恩恵を受ける患者をいかに選ぶか,という点は極めて重要である.

近年の分子生物学的検査法の進歩により,治療の経過中に体内にどの程度の白血病細胞が残存するか(微小残存病変)を正確に判定することが可能となった.これは,真に治療反応性が悪い患者を最も正確に同定できることを意味し,微小残存病変の有無が,小児急性リンパ性白血病における移植適応を決める,主要な指標となることの所以である.本稿では,再発小児急性リンパ性白血病の症例を提示し,いかにして移植適応を決めていくかを考え,あわせて,同種造血細胞移植の“光と影”について概説した.また,近年の再発クローンの遺伝子解析や,新規抗体および細胞治療の出現をふまえ,再発急性リンパ性白血病の同種造血細胞移植を含めた今後の治療のあるべき姿についても考察したい.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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