2016 年 53 巻 3 号 p. 212-218
がん診療における診断・治療は患者の生命予後を飛躍的に改善し,長期生存患者のQOL(quality of life)という問題にも目が向けられるようになってきている.とりわけAYA(adolescents and young adults)世代に対する化学療法,放射線照射,外科的処置の結果生じる生殖内分泌異常,不妊の発症はQOLを大きく損なう.特に早発卵巣不全(POI)は難治性不妊となる.一方,生殖医療の進歩によって,がん治療前の妊孕性温存の選択肢が検討可能となり,がん治療前の情報提供がより重要と認識されるようになってきている.本稿では,がん治療による卵巣機能低下と不妊,さらに国内のがん・生殖医療の現状について言及する.