2016 年 53 巻 3 号 p. 314-318
小児全身性EBV陽性T細胞リンパ増殖症(TLPD)は稀で様々な臨床症状を呈するが,ほとんどが急性の臨床経過で造血幹細胞移植などの治療なしでは予後不良と考えられている.我々はEBV-HLH(EB virus associated hemophagocytic lymphohistiocytosis)が鎮静化した後に中枢神経系にLPDを認め,外科切除のみで寛解を維持している非典型的な臨床経過をたどった例を経験した.症例は5歳の女児.EBV-HLHの病勢コントロールにprednisolon,cyslosporin(CyA),多剤併用の化学療法を行ったが可逆性白質脳症(PRES)を発症した.退院3か月後に,児は無症状であったものの,follow upの目的で撮影した頭部MRIで左頭頂葉に3 cm×3 cm×2 cmの腫瘤性病変と白質の広範な浮腫が認められた.血清・髄液中のEBV-PCRが陽性で,全摘された病理組織ではmonotonousなCD3陽性,CD8陽性,EBV early RNA(EBER)陽性のリンパ球浸潤が認められ,小児全身性EBV陽性TLPDと診断された.切除後には血清・髄液中のEBV-PCRの低下を認め,化学療法などの後療法を行わず,約3年が経過し寛解を維持している.TLPDの臨床症状や経過は多様であることから,TLPDやその他のEBV関連疾患の病型分類を正しく行い,標準治療を確立するため,本邦において症例の集積が望まれる.