2016 年 53 巻 3 号 p. 309-313
Acral erythema(AE)は,手掌・足底発赤知覚不全症候群(palmar-plantar erythrodysesthesia syndrome)とも呼ばれ,異常知覚や疼痛を伴って手掌足底に出現する紅斑を主徴とする疾患である.治癒過程において時折落屑を伴う水疱疹(bullous AE)を生じることもあり,またしばしば抗がん剤大量療法の副作用として発症する(chemotherapy-induced AE, CIAE).症例はB-cell precursor acute lymphoblastic leukemiaの2歳女児.中枢神経予防相において,大量methotrexate(MTX)を投与する度に手掌と下肢に紅斑が出現.特に手掌に強く,中心部に痺れなどの異常知覚を伴う水疱が認められた.その後に行った中等量MTXの際にも同様の紅斑が再度出現した.CIAEの程度は,MTXの投与量と投与間隔に比例していたことからMTXによる直接的な細胞毒性が疑われたが,一方でMTXに対するdrug-induced lymphocyte stimulation testが強陽性であり,アレルギー反応の関与も示唆された.CIAEの予後は良好で,自然軽快するため,化学療法の計画は変更することなく遂行を優先されるが,ときに副腎皮質ステロイドによる対症療法が必要となる.