日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム (教育セッション) 6: 小児凝固・線溶異常症の新たな治療戦略
小児血液疾患における遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)の役割
小阪 嘉之
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2016 年 53 巻 5 号 p. 376-383

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抄録

トロンボモジュリン(TM)は,血管内皮細胞表面に存在し,抗血栓作用のうえで,極めて重要な役割を果たしている.

遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)は,分子量約64,000の糖タンパクで,わが国で開発された播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療薬として,2008年5月から臨床使用されている.

rTMは質の高い国内の臨床試験や使用成績調査において,DICに対する有効性・安全性が証明されており,小児・新生児領域でも,多数例の使用成績調査の結果が報告され,成人と遜色のない良好な結果を得ている.

またrTMは,抗炎症作用や補体活性経路の制御作用を合わせ持ち,血管内皮細胞を保護する作用があることから,造血幹細胞移植 (HSCT) 後の血栓性病態,すなわち類洞閉塞症候群(sinusoidal obstructive syndrome: SOS)や移植後血栓性微小血管障害(transplantation-associated thrombotic microangiopathy: TA-TMA)に対する有効性も報告されている.

現在HSCT後のSOSやTA-TMAには確立された治療法が存在せず,rTMは大いに期待できる薬剤ではあるが,SOSやTA-TMAに対する使用に際しては,保険適応がないことには注意を要する.

本稿では,小児血液疾患に対するrTMの位置付け・役割について自験例を交えながら概説する.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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