日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム8: For improvement of the quality of life of patients with childhood hemophilia
小児血友病A治療における新規治療薬への期待
野上 恵嗣
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2017 年 54 巻 2 号 p. 106-110

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抄録

小児科領域における血友病Aの治療の原則は第VIII因子製剤の定期補充療法である.その結果,血友病性関節症の発症が抑制され,健常児と同等の日常生活が可能となっている.一方,製剤の頻回経静脈投与とそれに関わる血管アクセスの問題,製剤投与後に発生するインヒビターが現在の血友病医療のunmet needsとして挙げられる.これらの課題に対し,全く新たな止血機序による血友病治療製剤が開発されている.ヒト型bispecific抗体(ACE910; emicizumab)は,抗原部位の片方に第IX因子,もう片方に第X因子が結合することにより,活性型第VIII因子機能を代替するコンセプトの製剤である.第1相臨床試験がわが国で実施され,血中半減期は約30日であること,週1回の皮下投与により年間出血回数がインヒビターの有無に関わらず著しく減少したと報告された.また,‘Rebalance coagulation’ コンセプトの新規治療薬としてsiRNAを利用した抗アンチトロンビン治療製剤(ALN-AT3)と外因系凝固制御を担う組織因子経路インヒビター(TFPI)に対する抗体製剤(concizumab)が開発され,現在臨床試験が実施されている.Emicizumab同様に両者とも皮下投与であり,インヒビターの有無に関わらず出血予防が期待できる利点がある.このように,新しいコンセプトの新規血友病治療製剤の開発により,小児血友病A患者の長年の課題を克服し,QOLが著しく向上することが大いに期待できよう.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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