日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
本邦における肝芽腫に対する造血幹細胞移植を用いた大量化学療法の治療成績
山本 将平渡邊 健一郎井上 雅美橋井 佳子菊田 敦金子 隆加藤 剛二原 純一田渕 健高橋 義行
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2017 年 54 巻 2 号 p. 126-132

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抄録

肝芽腫の治療成績は化学療法,手術,および肝移植により改善したが,遠隔転移や肝門部病変などの切除不能病変を有する症例の治療成績は依然として不良である.これらの症例に対して造血幹細胞移植を用いた大量化学療法が施行されることもあるがその有効性は明らかでない.そこで,今回,日本造血細胞移植学会造血細胞移植登録一元管理委員会に造血幹細胞移植を受け登録された,肝芽腫136例(のべ移植回数162回)の治療成績について後方視的に検討した.移植病期は寛解期70例,非寛解期80例,不明12例であった.前処置はHiMEC(CBDCA,VP16,L-PAM),TEPA+L-PAMが最も多くそれぞれ51,43例であった.全体の5年全生存率,5年無病生存率はそれぞれ63.7%,50.3%であった.移植時寛解群と非寛解群の比較では5年全生存率でそれぞれ80.2%,49.8%(p<0.05),5年無病生存率でそれぞれ62.4%,38.4%(p<0.05)であり非寛解群において有意に低かった.しかし,移植時非寛解群においても5年全生存率は50%弱であり過去の報告と同程度であった.肝移植,外科的治療の進歩により肝芽腫に対する大量化学療法は行われなくなってきているが,今後,大量化学療法の有効性を評価する場合には,診断時遠隔転移症例など再発リスクの高い症例に対し,統一レジメンを用いた臨床試験を行ってなされる必要があると思われる.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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