横隔膜原発のyolk sac tumorは極めて稀な疾患である.今回,我々は11ヶ月の男児例を経験したので,文献的考察とともに報告する.
本症の初発症状としては咳嗽,胸部痛,多呼吸,胸水貯留といった胸部関連の症状および所見を呈することが多い.発生部位の診断には3D-CTおよびMRIの冠状断像と矢状断像が有用である.治療は組織学的診断確定後にプラチナ製剤を含んだ術前化学療法を行い,腫瘍が縮小したあとに完全摘出術を施行することが重要とされている.
自験例においても咳嗽,胸水貯留といった主に胸部症状および所見にて発症し,MRIの冠状断像と矢状断像から横隔膜原発腫瘍と診断した.yolk sac tumorの組織診断後,プラチナ製剤であるcisplatinで構成された術前化学療法を施行し,腫瘍縮小後,腫瘍の完全切除を行った.全治療終了後から15年の現在,患児は再発なく,また,化学療法後の障害もなく経過している.