近年の定期補充療法の浸透,血液凝固因子製剤の進歩などにより,血友病患者のQOLの向上は著しい.しかし,血友病保因者への支援は十分とはいえず,実際に保因者であることを妊婦である母親が知らされないまま出産に臨み,吸引分娩や鉗子分娩による頭蓋内出血のために重篤な後遺症をきたした児も少なからず存在する.このような事態を避けるためには,適切な保因者診断や遺伝カウンセリングを含めた保因者への支援や情報提供が重要であるとともに,周産期管理が適切に行われなければならない.2014年に産婦人科新生児血液学会においてワーキンググループが設置され,検討を重ねたのち「エキスパートの意見に基づく血友病周産期管理指針2017年版」が作成された.血友病周産期管理においては,産科医,新生児科医,麻酔科医,血友病専門医の間での連携が重要であり,頭蓋内出血のリスクを避けるために吸引分娩や鉗子分娩は避けるべきである.出生後の新生児に対してはできるだけ速やかに血友病診断を行う.頭蓋内出血が血友病の初発症状となることも珍しくないため,血友病の家族歴が無くともAPTT延長時には血友病を疑う.止血治療には,凝固因子製剤を使用し,凝固因子活性値をモニタリングしながら補充療法を行う.製剤投与後はインヒビターの出現の有無を定期的に行う.