日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
ISSN-L : 2187-011X
シンポジウム8: 小児血友病患者のQOLの向上を目指して
血友病インヒビター患者の治療戦略
小倉 妙美
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 54 巻 5 号 p. 356-361

詳細
抄録

血友病AおよびBは,血液凝固第VIII因子および第IX因子の遺伝子異常に基づく先天性凝固障害性の出血性疾患である.重症血友病患者の体内には生まれつき第VIII(IX)因子がほとんど存在しないため,補充された因子を免疫システムが「非自己」と認識することにより,インヒビターが発生すると考えられている.一旦インヒビターが出現すると,従来の補充療法の効果を低下あるいは消失させるため止血管理が困難となり,血友病治療最大の障壁となる.インヒビター患者に対する治療は,急性出血や手術時等の止血療法とインヒビター消失を目的とした治療に分けられる.止血治療は,バイパス製剤による止血療法と当該因子での中和療法であり,止血ガイドラインが日本血栓止血学会から出されている.インヒビター消失を目的とした治療としては,免疫寛容導入(immune tolerance induction: ITI)療法やリツキシマブなどによる免疫抑制療法がある.重症血友病Aインヒビター症例に対してはITIの有効性が証明され,50–80%が成功している.血友病Bに関しては,血友病Aと比べると約30%と成功率が低く,アレルギー症状やネフローゼ症候群の出現なども認めるため,施行に関しては十分な検討・準備が必要である.

著者関連情報
© 2017 日本小児血液・がん学会
前の記事 次の記事
feedback
Top