日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション3: 脳腫瘍(髄芽腫, 悪性神経膠腫(脳幹神経膠腫を含む))
髄芽腫
―分子解析に基づくサブタイプと今後の展望―
岡田 恵子
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2017 年 54 巻 5 号 p. 367-372

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抄録

小児脳腫瘍の25%を占める髄芽腫は,後頭蓋窩発生の悪性胎児性腫瘍である.病理組織型や,臨床的特徴,分子生物学的特徴が予後に関連し,髄芽腫は均一疾患ではないと認識されていたが,現在に至るまで,「年齢」「腫瘍摘出度」「転移の有無」という臨床的特徴のみでリスク分類を行い,放射線療法と化学療法の治療強度を決定するという治療戦略が取られ,現在の5年全生存率はおよそ70%である.

2010年代になり,髄芽腫は遺伝子発現パターンや細胞遺伝学的異常などにより「WNT」「SHH」「Group 3」「Group 4」の4つのサブグループに分類されると報告され,それぞれ異なる腫瘍発生母地と,特徴的臨床像を有し,予後も異なることが判明した.これらの知見は,髄芽腫がそれぞれのサブグループ別の特徴に応じた治療が必要であることを示しており,今後の治療開発に取り入れるべく各国で議論が続いている.しかし同一サブグループ内であっても,有する遺伝子異常の差異や年齢等により,さらに予後が異なることが判明し,今後さらに細分類される可能性がある.よってサブグループを臨床応用するのは時期尚早であり,世界の情勢を見極める必要がある.現時点では,WNT群や乳児型SHH群などの予後良好群では治療減弱が可能かを臨床試験にて検証するというように,臨床試験の目的に応じて分子学的特徴を部分的に取り入れていくのが現実的である.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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