日本小児血液・がん学会雑誌
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ワークショップ2: 小児がん拠点病院と小児がん診療を担う地域医療機関の役割
新潟県地域中核病院での小児悪性腫瘍診療における小児外科領域の役割と課題
窪田 正幸今井 千速小川 淳
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2017 年 54 巻 5 号 p. 362-366

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抄録

平成25年に小児がん拠点病院が認定され,拠点病院と地域中隔病院との役割分担と連携効率化が求められている.新潟県では過去40年にわたり県内中核病院を中心とした小児がん診療体制を構築し,県内症例の統一的治療を行ってきた.今回,小児がん拠点病院に選出されなかったことから,地域中核病院として役割と今後の方向性を再検討すべき段階となり,外科治療を担当する立場から考察した.

拠点病院の条件を満たすための課題は,先進的な臨床試験や新薬治験が行える臨床研究体制の充実,保育士,専門看護師,臨床心理士などによる高度で専門的なサポート体制,緩和ケア,義務教育年限後の学業支援,社会復帰支援などの他に,陽子線治療施設,小児がん専門病棟,ファミリーハウスなどのインフラ充実があげられる.これらは中核病院のみでは解決できない課題も多く,今後の行政への働きかけと連携が重要となる.

一方,現在の進行例の外科治療は,手術リスクの評価,生検,化学療法と放射線治療後の遺残腫瘍摘出であるが,腫瘍発生部位は多岐にわたり,外科関連科との知識と技術との連携協力をもってしても,重篤な合併症を回避できない症例も多く,腫瘍完全摘出ではなく陽子線治療を併用した外科治療など,今後拠点病院との連携強化も重要である.さらに,腫瘍切除のための小児外科,整形外科,泌尿器科,脳神経外科など多領域の知識と経験を有する外科医の育成も重要と考えられる.

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© 2017 日本小児血液・がん学会
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