日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム2: 小児血液・がん患者に対する感染症対策 ~予防から治療まで~
造血細胞移植における感染症対策
佐野 弘純小林 良二
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2018 年 55 巻 2 号 p. 109-115

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抄録

造血細胞移植では強力な移植前処置が行われることに加えて,免疫抑制剤の使用や移植片対宿主病(graft-versus-host disease: GVHD)のために感染性の合併症が多く,移植を成功に導くために感染症の管理が極めて重要である.急性GVHDがあると免疫抑制剤の使用や腸管粘膜バリアの破綻から細菌性血流感染症(blood stream infection: BSI)の発症リスクが高まるが,逆に細菌性BSIを発症するとその後急性GVHDを発症しやすくなる可能性がある.移植後の深在性真菌症発症のリスク因子は10歳以上・GVHDの合併・ステロイドの投与であるため,年長のGVHD合併例では抗真菌薬による予防を考慮すべきである.移植後のヒトヘルペスウイルス6型(human herpes virus-6: HHV6)の再活性化は臍帯血移植例に多く,特に低ナトリウム血症を合併した際には注意が必要である.ステロイド抵抗性の急性GVHDに対して,間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)は全身性の免疫抑制作用が目立たない有望な治療薬であるが,肺感染症などが増加するとの報告もあり注意が必要である.移植後の感染症をコントロールし,移植を成功に導くためには,移植後の時期ごとに想定される感染症のリスク因子を把握し,感染症発症の予防および早期発見に努めることが重要である.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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