日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム7: 固形腫瘍のゲノム医療(がん学会と合同シンポジウム)
高リスク神経芽腫に対する統合的ゲノム解析による腫瘍起源の検討
木村 俊介滝田 順子
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2018 年 55 巻 3 号 p. 229-234

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抄録

神経芽腫は神経堤細胞を起源とする小児がんで最も多い頭蓋外固形腫瘍である.過去のゲノム解析は染色体異常と比較して遺伝子変異が非常に少ないことを示した.このことは他の小児腫瘍と同様に分化の過程の異常が神経芽腫の主な原因であることを示唆している.原発部位として最も多い副腎髄質は主にchromaffin cellにより構成される.近年,神経堤細胞から直接分化する今までのモデルに加えて,schwann cell precursorを介する新規知見が明らかになった.また,発現を制御するスーパーエンハンサーにより,神経芽腫はnoradrenergic (ADRN) 群とmesenchymal (MES) 群の2つに分類されることが報告された.本研究では30例のStage 4神経芽腫に対して統合的ゲノム解析を行い,発現パターンによって交感神経系の特徴を有するADRN群とchromaffin cellの特徴を示すMES群に分類した.さらにADRN群はATRX異常を高頻度に伴うATRX群とMYCN増幅を高頻度に伴うMYCN群に分類され,神経芽腫は3群に分類されることが明らかとなった.これらの群は起源や分化の過程が異なるだけでなく,発現・遺伝学的異常にも大きな特徴を有していた.高リスク神経芽腫の治療強度はすでに限界に近くこれ以上の治療強化は大きく望めないため,これらの特徴を考慮した新規治療戦略の開発が期待される.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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