日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム9: 小児がん患者の治療中のQOLの向上を目指して
小児がん患者における口腔ケア
吉田 衣里森川 優子仲野 道代
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2018 年 55 巻 3 号 p. 235-238

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抄録

小児の悪性腫瘍の代表的な疾患である白血病あるいは固形腫瘍である横紋筋肉腫や髄芽種のうち,重度でステージが高く重症な症例においては放射線治療や大量化学療法に続き,その後に生じる造血機能不全を補うために造血幹細胞移植を行うケースが多い.造血幹細胞移植の際には,化学療法,免疫抑制剤,放射線治療を行うために,好中球がほとんど存在しない状態となり,口腔内には口腔粘膜障害が発症するリスクが最も高い.口腔粘膜障害の症状としては,発赤,出血,口内炎,潰瘍,および口角炎などがみられ,重度なものでは開口障害を生じる.口腔粘膜障害の治療としては対症療法が主となるが,周術期において早期に歯科的介入を行うことにより,症状を軽減させることが可能である.そのため,患者および保護者に口腔ケアの重要性を理解してもらうことが重要である.口腔ケアとしては,ブラッシング,含嗽,および保湿が挙げられる.さらに口腔粘膜障害は一旦消失しても慢性的に口腔内粘膜に拘縮が生じ,刷掃困難や唾液の減少による口腔内乾燥等が生じることが多くみられ,重度齲蝕や歯周病の発症がみられることもある.そのため小児においては,周術期の口腔ケアのみならず,長期にわたるフォローアップが重要である.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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