日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
東京都内の緩和ケア病棟における,小児の在宅がん患者の受け入れ体制に関する実態調査
森 尚子松村 昌治雨宮 馨山上 あゆむ
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2018 年 55 巻 5 号 p. 412-416

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抄録

【背景】在宅で闘病する小児がん患者が入院を必要とする場合,現状では元のがん治療施設が入院先となることが多いと推測されるが,症状緩和を専門とする成人の緩和ケア病棟を開拓していくという道もある.現状ではどちらが望ましいか方向性が明らかでないため,実態調査を行った.【目的】成人の緩和ケア病棟に対するアンケート調査により,対応可能な小児がん患者の年齢や医療行為を明らかにし,小児がん患者の受け入れが可能かどうかを検証する.【方法】2016年6月,当院を除く東京都内の全緩和ケア病棟28施設に対し,小児がん患者の受け入れ実績・対応可能な年齢・提供できる支持療法の内容につきアンケート調査を実施した.【結果】18施設(64%)から有効回答が得られた.小児がん患者の受け入れ実績があったのは2施設のみであった.提供可能な支持療法としては,放射線治療(n=8, 44%),経口の抗がん剤(n=3, 17%),赤血球輸血(n=8, 50%),血小板輸血(n=7, 44%),高カロリー輸液(n=13, 72%)と比較的多くの回答が得られたが,小児用中心静脈ポート(n=2, 11%),小児の経管栄養(n=2, 11%)と,小児のデバイスについては使用困難であった.小児を診療している在宅クリニックとの連携もなかった.【結論】小児の在宅がん患者が苦痛緩和のために入院する場合,現状では元のがん治療施設が受け皿とならざるを得ず,各小児がん治療施設での緩和ケアの普及・質向上・地域連携が極めて大切である.

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© 2018 日本小児血液・がん学会
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