日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム5: 血友病の現状と今後の治療選択
血友病インヒビターA患者の治療戦略
野上 恵嗣
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2019 年 56 巻 3 号 p. 282-286

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抄録

血友病Aは,血液凝固第VIII因子(FVIII)の遺伝子異常に基づく先天性出血性凝固障害症である.FVIII製剤を出血時あるいは定期的に補充することにより,血友病患者は出血抑制により関節症発症が著しく抑制され,結果としてQOLは飛躍的に向上した.一方,補充療法に伴い,重症血友病Aの20–30%に抗FVIII同種抗体(インヒビター)が出現する.一旦インヒビターが出現すると,既存の止血治療を極めて不安定かつ困難にさせるため,血友病治療の大きな課題となっていた.インヒビター保有患者の止血治療戦略として,1)インヒビター発生要因を解明して出現を防ぐこと,2)インヒビター消失を図ること,3)有効な止血ならびに予防治療を確立することである.最近,本邦での免疫寛容導入療法の成績報告,そして皮下注射のbispecific抗体(emicizumab; ヘムライブラ®)が市販され,インヒビター患者において著明な出血抑制効果を示している.本稿ではインヒビター治療の現状について概説する.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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