日本小児血液・がん学会雑誌
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教育セッション7: 輸血療法
輸血療法
北澤 淳一
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2019 年 56 巻 5 号 p. 436-440

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抄録

輸血療法は一種の同種移植であり,重篤な副反応が生じ,また医療過誤につながることもある.日本輸血・細胞治療学会では,製剤ごとに科学的根拠に基づく使用指針を作成し公表した.厚生労働省は,その指針を参考にして,血液製剤の使用指針を改定した.新生児・小児の輸血療法では,主に生後4か月までの新生児・乳児を対象として1994年から2014年までの文献を基準に則り推奨の強さ,アウトカム全般に対するエビデンスの強さを判定し,推奨文を作成した.3つのclinical questionを,新生児への赤血球輸血のトリガー値,新生児への血小板輸血のトリガー値,サイトメガロウイルス抗体陰性血の適応と設定した.トリガー値は,赤血球輸血はヘモグロビン値7 g/dL,血小板数2~3万/μL,サイトメガロウイルス抗体陰性血の適応は母体がサイトメガロウイルス抗体陰性の場合または陽性が確認されていない場合に行う胎児輸血,また同様の母体から出生した児に,生後28日未満の間に行う輸血とした.生後4か月を超える乳児・小児の輸血療法は科学的根拠に基づく製剤別使用指針を参考とする.新鮮凍結血漿の使用の基準とされたフィブリノゲン値は150 mg/dLとなったので注意が必要である.アルブミン製剤投与に関しても,従来使用されてきた病態・疾患では有効性が科学的には示されないものもあったので注意が必要である.重篤な副反応を有する輸血療法はチーム医療でリスクを制御する必要がある.また,医師には中心的役割が求められ,血液製剤の使用指針,輸血療法の実施指針に精通し,適正で安全な輸血療法に努める必要がある.

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© 2019 日本小児血液・がん学会
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