小児急性リンパ性白血病寛解導入療法中に十二指腸穿孔を来したが外科手術を回避して保存的治療で軽快した症例を経験したので報告する.症例は3歳男児.繰り返す感染と白血球減少で発症し,前駆B細胞急性リンパ性白血病と診断された.寛解導入療法開始15日ごろより便秘と腹痛が遷延した後,26日めに急激な腹痛の悪化と腹部膨満および発熱を認めた.化学療法を中止し,抗菌薬・H2受容体拮抗剤の投与を開始した.28日めの腹部造影CT検査で遊離ガス像と十二指腸球部の穿孔所見を認め十二指腸穿孔と診断した.症状の増悪や腹膜炎の進行を認めなかったため絶飲食・経鼻胃管留置・プロトンポンプ阻害剤などの保存的治療を行い症状は軽快した.外科療法は行わなかった.その後潰瘍や穿孔の再燃はなく完全寛解を維持している.化学療法中の消化管穿孔は予後不良のため,腹部症状が遷延する場合には消化管潰瘍に対する予防的な支持療法も検討が必要である.