日本小児血液・がん学会雑誌
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委員会報告
JCCG腎腫瘍委員会報告:両側Wilms腫瘍臨床研究RTBL14の結果―希少疾患に対する臨床試験施行上の問題点
大植 孝治越永 從道野崎 美和子桑島 成子田中 祐吉大喜多 肇瀧本 哲也福本 弘二
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2020 年 57 巻 3 号 p. 318-325

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抄録

【緒言】過去の多施設共同研究において両側性Wilms腫瘍(WT)の予後は良好であったが,腎温存に関しては満足のゆく結果は得られなかった.そこで腎温存を主眼とした新プロトコールを作成し,2014年より臨床試験RTBL14を開始した.今回臨床試験を終了したので結果を報告する.

【方法】研究の主目的は一年後の両側腎温存率とした.両側性WT全例に3剤を用いた術前化学療法を行い,腫瘍の縮小を図った後に腎温存を目指した手術を行う方針で治療を行った.

【結果】研究参加施設が23施設と少なく,登録症例数も3例と予定数を大きく下回ったため,これ以上継続しても予定症例数を集めることは困難と判断し,予定研究期間の5年で研究を終了した.登録された3例中1例は腫瘍内出血を起こしたためプロトコール逸脱症例となった.残りの2例はプロトコールを完遂したが,最終的に両側腎が温存できたのは一例のみであった.3例とも無病生存中で,予後は良好であった.

【結語】医師へのアンケート調査では,研究に不参加の理由として両側性WTの症例が少ないためせっかく倫理審査を受審しても,症例を登録しないまま終わってしまう,という回答が最も多かった.小児腫瘍治療の集約化が進んでいない本邦において,このような超希少疾患で必要症例数を集めることは困難であり,治療法改善のためには,国際共同試験を積極的に進めることが不可欠であると考えられた.

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