日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
輸血後のアナフィラキシーショックを契機に発見された先天性ハプログロビン欠損症の小児例
金澤 剛二谷ヶ崎 博平井 麻衣子渡邊 直樹渡辺 嘉久陳 基明森岡 一朗
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2020 年 57 巻 3 号 p. 314-317

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抄録

症例は神経芽腫で治療中の2歳女児である.入院時に貧血を認め,人赤血球濃厚液を輸血した.輸血開始20分後から全身に蕁麻疹が出現したため,グリチルリチン酸とヒドロコルチゾンの経静脈的投与を行った.その後,多剤併用化学療法を開始した.化学療法による骨髄抑制による血小板減少に対して血小板濃厚液を輸血したところ,血小板輸血開始4分後から呼吸困難,血圧低下と徐脈から呼吸停止に至った.ただちに心肺蘇生を開始し9日間人工呼吸管理を必要としたが,集中治療管理により神経学的後遺症なく回復した.以降,輸血時の前処置として,赤血球輸血時は洗浄赤血球を使用し,血小板輸血時は2回洗浄を実施することで,同様の副作用は繰り返さずに経過した.輸血副作用の精査の結果,患者血清のハプトグロビン(Hp)値は検出限界以下で,抗Hp抗体が陽性であった.さらにHp遺伝子の欠失を認めたことから,先天性Hp欠損症と確定した.先天性Hp欠損症と神経芽腫との関連性については今後の検討が必要かもしれない.

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© 2020 日本小児血液・がん学会
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