日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
PRF1c.658G>Aとc.1090_1091delCTの複合ヘテロ接合体による新生児期発症の家族性血球貪食性リンパ組織球症の1乳児例
西織 雅君日野 もえ子力石 浩志山下 喜晴菱木 はるか八角 高裕藤井 克則
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2021 年 58 巻 1 号 p. 26-30

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抄録

日齢27に発熱より発症し,汎血球減少,肝機能障害,フェリチン高値を呈し血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis, HLH)として当院に搬送,呼吸・循環不全のために集学的治療が必要であった.PRF1遺伝子解析においてc.1090_1091delCTとc.658G>Aの複合ヘテロ接合体と判明し家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial HLH, FHL)type2と確定診断した.c.1090_1091delCTは既知の変異であった.c.658G>Aは現時点では病的意義は不明とされているが,ホモ接合体でperforin発現が欠損し,FHL2を発症した例も報告がある.c.1090_1091delCTとヘテロ接合体でFHL2を発症する遺伝子変異の組み合わせとして本症例は初報告であった.またc.658G>Aを伴うFHL2は本邦初の症例であった.本症例では非骨髄破壊的前処置による臍帯血移植を実施したが,合併症や移植時点での高い疾患活動性のため移植後間もなく死亡した.FHLは非常に稀な疾患であり,新規遺伝子変異に関する報告を蓄積し病的変異として広く認識されることが望まれる.

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© 2021 日本小児血液・がん学会
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