小児の血液・腫瘍性疾患は治療の進歩から予後が改善し,現在10万人を超える患者が成人期を迎えたと推測される.一方,治療を終えた患者の半数以上は原疾患や治療に伴う合併症を抱えていることが多くの研究から明らかにされている.治療継続あるいは終了後でも合併症のある患者が適切に成人医療に移行するには多くの障壁が存在する.小児期発症の慢性疾患患児の成人期移行は血液・腫瘍性疾患に限らず他専門領域でも課題である.血液・腫瘍性疾患の患児はがん化学療法のほか,造血細胞あるいは固形臓器移植もうけることがある.そのため,合併症が多様で個々の対応も複雑となり,学会の公式な提言はこれまでには十分なされてこなかった.本稿では患児の成人期移行に欠かせない「自立支援」と「教育」をよりスムーズに実現するため,移行支援プログラムの必要性,行政レベルでの支援体制整備,移行に役立つ教育関連ツールなどを紹介する.患者教育を推進しつつ,受け手となる成人診療科との対話を通じて小児血液・腫瘍性疾患患者の成人期移行の重要性を考える.今後成人診療科の各学会と小児科学会,そしてこれらの分科会と連携して患者・家族支援を行いながら,成人期以降も患者が安心して健康管理を継続することができるよう学会活動に取り組みたい.