小児・AYA世代がんの長期フォローアップの目的は小児あるいはAYA世代にがんを発症し,治療後に様々な問題を乗り越えて社会生活を営む経験者の支援を行うというもので,多職種の連携をもとに小児から成人期への移行の問題などを考慮しながら進める必要がある.日本小児血液・がん学会では2017年度から厚生労働省の委託事業として「小児・AYA世代がんの長期フォローアップに関する研修会(Lifetime Care and Support for Child, Adolescent and Young Adult Cancer Survivors (LCAS))を行い,医師,看護師をはじめとする小児・AYA世代がんに携わる人材の教育活動を行ってきた.3年間で10回の研修会を開催し,その内容は座学での講義(3年目からはe-learningを交えて),事例に対してのグループワーク,成人科の医師の専門分野の講義,あるいは移行後の診療についての講義,生殖に関連した講義,がん経験者の話などを含んだもので,3年間で総計約500名の参加者があった.50名を超える医師,看護師,その他の医療者がスタッフとして加わり,何度も議論を重ね,研修会をブラッシュアップしてきた.これまで長期フォローアップの重要性や晩期合併症の意味を十分に理解していなかった参加者も,この研修会に参加し,実際の長期フォローアップや移行期医療について多職種の医療者と一緒に模擬体験を経ることによって,実際の小児・AYA世代がんの長期フォローアップが現実味を帯びた重要課題として理解できた方が多いと思われる.
なお,この研修会は2020年,2021年も日本小児血液・がん学会および小児がん拠点病院の中央機関である国立成育医療研究センターが中心となり行われている.今後,これまでの参加者からその周囲の医療者に対して研修内容が伝わっていくことが期待される.さらに小児がん拠点病院を中心にこの活動を継続していく計画となっており,長期フォローアップについて多くの医療者が学ぶ機会を得られるよう活動を推進していく予定である.
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