2022 年 59 巻 3 号 p. 219-223
がんにおける組織内の多様性は古典的には1970年代から報告がされてきたが,近年になり,次世代シークエンスを含む様々な解析技術の発展によって徐々にその組織や細胞集団の不均一性が詳細に明らかになってきた.その不均一性を正確にとらえられる強力なツールが,単一細胞レベルでの遺伝子発現を解析する手法であるシングルセルRNAシークエンスである.
主なシングルセルRNAシークエンスの解析手法として,次元削減法と偽時系列解析を含む分化軌道解析が挙げられる.次元削減法によって,がんの異なるクローンを区分し,がん幹細胞の病態解明,初発時・再発時クローンの差異,治療相毎での免疫担当細胞の変化,患者の予後に直接影響するクローン集団の同定などが可能になる.また,分化軌道解析によって,不均一な細胞集団のそれぞれのクローン起源に迫ることも可能である.
将来的には,シングルセルRNAシークエンスと近年発展してきたシングルセルでのクロマチン動態の解析手法の統合は,さらに正確に不均一ながんの病態を解明し,テーラーメイドの治療につながる可能性を有している.