日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム5:小児がんの陽子線治療の保険診療収載から5年たって
小児がんの陽子線治療の保険診療収載から5年たって:紹介施設からの提言
福岡 講平康 勝好
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2022 年 59 巻 3 号 p. 224-228

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抄録

【緒言】陽子線治療は有害事象の軽減の期待から小児がんに対する実施が増加しており,2016年4月から保険適応にもなっている.本報告では当院における陽子線治療実施状況について報告し,陽子線治療を依頼する紹介施設の立場から現状と今後について考察した.

【方法/結果】2016年4月から2021年3月までに陽子線治療を行った症例は17例であり,原疾患は脳腫瘍7例,横紋筋肉腫5例,ユーイング肉腫4例,神経芽腫1例,初発症例の診断から照射までの期間は中央値4か月(0–8)であった.転帰は死亡2例,再発生存2例,無病生存13例であった.陽子線照射後観察期間は中央値16か月(7–63か月)で,陽子線照射に起因するCommon Terminology Criteria for Adverse Events Grade 3/4の非血液毒性はGrade 3食道炎1例のみであった.

【考察/結語】陽子線治療を実施した症例は有害事象も許容範囲であったが,観察期間が不十分な症例も含まれ今後はさらに長期間の観察により認知機能や二次がん等の長期合併症の評価が必要である.陽子線治療の適応と考えられた症例は早期から治療施設とコンタクトを取ることでスムーズに転院して治療を受けることができたが,化学療法を併用する症例や鎮静を必要とする症例も多く,陽子線治療施設のネットワーク化による受け入れ態勢の整備が望まれる.

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