日本小児血液・がん学会雑誌
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特別講演:AYA研究・活動の最前線
AYA世代がん患者をネットワークで支える
―大阪府がん診療連携協議会小児・AYA部会の活動
中田 佳世宮代 勲松浦 成昭
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キーワード: AYA世代のがん
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2022 年 59 巻 5 号 p. 331-337

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抄録

2018年に策定された第3期がん対策推進基本計画において,思春期・若年成人(adolescent and young adult, AYA)世代へのがん対策が掲げられている.わが国におけるAYA世代(15~39歳)の年間新規がん罹患数は約20,000例で,小児がんの罹患数(約2,000例)よりは多いが,全年齢(約100万例)における割合はわずか2%程度である.この世代に発生するがんは,15~19歳では白血病,20歳代では卵巣がんや精巣がん,甲状腺がん,30歳代では乳がん,子宮頸がん,消化器がんが多く,小児に多いがんと成人に多いがんが混在する.また,この世代には多様なニーズが存在し,がん医療のみならず,生殖機能温存,教育や就業など幅広い視点での支援が必要である.AYA世代のがん患者は,成人に比べて数が少ないにも関わらず十分集約されておらず,医療従事者に診療や相談支援の経験が蓄積されにくい.欧米では,2000年ごろよりAYA世代のがん患者の治療成績や,この世代特有の心理社会的なニーズが明らかとなり,AYA世代へのがん対策が活発になっていた.わが国においても,近年,各分野で研究や支援への取り組みが始まっているが,地域や病院レベルの,具体的な対応が求められている.大阪府では,2011年に大阪府がん診療連携協議会小児・AYA部会が発足し,大阪府がん登録データを利用したAYA世代のがん患者の診療実態調査,がん患者の生殖機能温存や就学支援に関する情報提供用のパンフレットの作成,ホームページでの情報発信などを行っている.本稿では,わが国のAYA世代のがんの現状と,AYA世代に対する全国および大阪府での取り組みを紹介する.

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