日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム5:小児がんの陽子線治療の保険診療収載から5年たって
神戸陽子線センターでの経験から見えてきた課題
出水 祐介美馬 正幸福光 延吉鈴木 毅副島 俊典
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キーワード: 陽子線治療, 小児がん, 課題
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2022 年 59 巻 5 号 p. 363-365

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抄録

陽子線治療の対象となる小児がんは,基本的にX線治療の対象となるもの全てであるが,陽子線治療の最も良い適応疾患の一つと考えられている.本邦では,2016年4月に「小児悪性腫瘍に対する陽子線治療」が保険適用となったが,これは粒子線治療にとって初のことであり,期待の表れと言える.

神戸陽子線センターは,本邦初の小児に重点を置いた粒子線治療施設として,2017年12月に開設された.特長としては,①隣接する兵庫県立こども病院と渡り廊下で接続し,化学療法の同時併用が可能,②年少児の照射には不可欠な鎮静を担当する常勤の麻酔科医が在籍,③小児専用の治療室および待合室を備え,化学療法によって骨髄抑制状態の患児にも対応,などが挙げられる.小児がんに対する保険診療を本格的に開始した2018年度以降,症例数は全国1位をキープしている.

小児がんにおける陽子線治療の課題について,神戸陽子線センターでの経験に基づいて述べる.患者受け入れに関しては,陽子線治療施設の全国的な連携システムを構築し,運用中である.小児においても吸収性スペーサー留置は有用であるが,安全性や認知度に関する課題がある.AYA世代では保険診療で陽子線治療を受けられない患者がいるが,兵庫県では減免を行っている.小児がんは転移があっても根治を目指せることが多いが,現在は保険上の制約がある.今後も,これらの課題について継続的に議論していきたい.

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© 2022 日本小児血液・がん学会
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