2023 年 60 巻 1 号 p. 71-74
PRETEXT IIIの肝芽腫においては,系統的に完全切除するため3区域切除が検討されるが,切除後の残肝容積不足による肝切除後肝不全(PHLF)が危惧される.我々は,腫瘍の局在により,根治性と残肝容積確保のために,3区域切除を回避して,病変のない隣接亜区域を温存する右葉または左葉切除+亜区域切除(本術式)を3例に施行した.全例で顕微鏡的完全切除が得られ,5年以上の無再発生存を得ている.本術式群は右葉切除または左葉切除症例の手術時間や出血量と有意差はなく,術後化学療法開始までの期間も有意差はなかった.PRETEXT IIIの肝芽腫に対しては,症例によっては本術式により3区域切除を回避し,右葉または左葉切除と同等の手術侵襲で残肝機能の確保と腫瘍の系統的完全切除を両立できる可能性がある.