2023 年 60 巻 2 号 p. 161-166
小児期発症の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は,後天性骨髄不全疾患である再生不良性貧血(AA)としばしば合併・相互移行する(AA-PNH症候群)ことが知られている.症例は,12歳時にAAとして発症するも,免疫抑制剤などの内服加療にて血球数は安定し,PNHへ移行後も8年間無症状で経過したが,20歳時に激しい腹部症状を呈し,血栓症を発症したことを契機にエクリズマブを導入した.溶血所見の改善とともに血栓症の症状は劇的に改善し,また社会人となりラブリズマブへと移行することで,受診間隔の延長が可能となり,高いQOLが維持できている.小児期発症のAAにおいては,長期の経過での病態の移行に注意が必要であり,またライフイベントに合った治療方針の選択が重要と考える.